Brewster & Turquiose & RINPA!

19世紀のお宝万華鏡

ブリュースター トルコ石 琳派!

Brewster & Turquiose & RINPA!


 日本万華鏡博物館には19世紀に作られた万華鏡が10点ほど所蔵されています。壊れやすい万華鏡が、100年以上も経つているのに、21世紀に残っているのは、それだけで奇跡と言ってもいいぐらいのものですが、日本万華鏡博物館の超お宝! といえるものが3点あります。そのうちの2点は世界唯一のもので、存在しているだけで、その不思議さを感じます。

 

ブリュースター・スコープは完璧である!

 

 デビット・ブリュースターは1816年に万華鏡を発明し、その後イングランドの幾つかの工房に万華鏡を作る許可を与えています。当館所蔵のものは、覗き窓に「EDINBURGH !I.RUTHVEN」と刻まれ、1820年代の作といわれます。ビーズケースを取ると、獅子と一角獣の紋様の下に、「Dr.BREWSTERS PATENT」という文字がリボン模様の中に刻まれ、リボンの下には「KALEIDOSCOPE」と。下の映像は覗いたものですが、半分暗くなっているのは、鏡の質により、反射がボケているからです。それがはっきりしているのは写真に撮ったからで、実際に回して見ると、こんなに暗くならず、もっと綺麗に見えます。丸い円形映像が、世界最初の万華鏡映像なのです。

 科学から生まれたものは、その誕生した時点で、完璧さを見せてくれます。科学は美しい! ということを感じさせてくれる存在なのです。長さは17Cm、若干焦点距離の20Cmより短いため、覗き窓には凸レンズがつけられています。理にかなった作られ方をしているのが分かります。原発などという嘘で塗り固められ、未来まで人々を苦しめる悪魔の存在と違い、美しい科学は人々を楽しまさせてくれます。科学はそうであってほしい、と強く感じます 。ブリュースターは三角柱に組んだ3ミラー万華鏡も作っており、またビーズの代わりに、凸レンズをつけて、風景全てを万華鏡映像にするテレイドスコープも楽しんでいます。科学者として、とことん万華鏡を研究している姿勢が見て取れます。こんな発言もしています。「万華鏡はたった1時間で、千人の画家が1年かかっても創れないものを創る」と。

 

トルコ石ペンダント万華鏡はフランス生まれ!

 

 トルコ石と金で装飾され、5つのトルコ石に囲まれた中にはダイヤモンドが輝いています。高さも長さも31mmのペンダントトップは、直径11mmの円筒形の万華鏡が付いていて、世界唯一の万華鏡です。トルコ石は合計27個、ダイヤモンドは4つ。18金で作られており、存在感は十分。円筒形は回すことができ、覗き窓の直径は2mmしかない。しかしはっきり2ミラー映像を見ることができるのは、覗き窓に凸レンズがつけられているから。装飾だけでなく、万華鏡としても十分楽しめます。その万華鏡を覗いた映像がこれです。

 掌に包むことのできる、小さな小さな万華鏡を覗くと、こんなにも大きな大きな宇宙が広がっているのです。この万華鏡を見つけてくれたのは、「なんでも鑑定団」に出演していた岩崎紘昌さん。岩崎さんの鑑定は「1840年代のフランスで作られている。これは女性の持ち物でしょう。この頃のイギリス製だと、もっときっちりした作りで、狩猟など男性の物が多い。フランスの貴族が、自分の家のお抱え細工師に作らせた物だろうけど、娘のために作らせたのか、愛人にプレゼントするために作らせたのか……」と。

 でも何故、トルコ石を使ったのだろう? トルコ石はオリエンタルな雰囲気を持つ石です。お抱え細工師は、どこの人だったのだろう? そしてこの万華鏡ペンダントを、その胸に飾った女性はどんな人だったのだろう?

 

太平洋を二度渡った、琳派流水紋万華鏡

 

 長さ23Cmの円筒部分に、流水模様が描かれ、ところどころに野草などの草花も描かれています。墨一色で描かれた流水は、尾形光琳の「紅白梅図屏風」(MOA美術館)に描かれた流水紋を彷彿とさせます。作られた年代は江戸末期から明治初めにかけて。外国人が多く住んでいた横浜あたりで、帰国する際の日本みやげだったのではないでしょうか?琳派の絵を模して流水文様を描いたのではないでしようか? よく見ると、桔梗のような花や、柳の枝ぶり、萩のような草花も描かれています。

 異国情緒をこの万華鏡に見いだした人はアメリカ人。万華鏡と共に帰国の途につき、太平洋を船で渡ります。それから百数十年、インターネット・オークションに載ります。映像はシンプルな3ミラー映像なので、あまり競争相手もなく、ゲットすることができました。今度は太平洋上を飛行機に乗って、生まれ故郷へ戻ることになります。長い時間をかけ、長い旅をしてきた万華鏡が、日本万華鏡博物館に入ることになりました。その間、この万華鏡はどこにいたのでしようか。この世の中に二つとない万華鏡は、深い謎を抱えて、どんな映像を見せてくれるのでしようか……。色ガラスがさらさらと動き、シンプルな中にも華やかさの見られる映像と、筒に描かれた墨一色のコントラストが、百数十年の趣きを出してくれます。

 

☆19世紀の万華鏡は、数も少なく、現在ではとても貴重な物になっています。時代を経るごとに、壊れやすくもなっています。これらの万華鏡は自由に手にとって見ることはできません。博物館で万華鏡を見ていただく場合も、自由に手にとって見ていただける万華鏡と、触れない万華鏡があることを、ご了承ください。