20世紀のおもちゃ万華鏡

20世紀のおもちゃ万華鏡

 

 万華鏡は20世紀に入り、学校教材、駄菓子屋さんの定番おもちゃとして全世界に広がって行きます。日本のおもちゃメーカーは、家庭内手工業の感があり、多品種少量生産が可能でした。今でもあるブームが起きると、たくさんのメーカーが一斉に作り始め、下火になるとサッと引いていく。ですので、微妙に似ている万華鏡が、いろいろとたくさん作られていました。しかし20世紀前半に作られた万華鏡は、ほとんど残っていません。不幸なことに、日本の20世紀は、戦争の世紀でした。紙とガラスの鏡で作られた万華鏡が、この厳しい時代に残っていくのは至難の技です。日本のおもちゃ産業は、また輸出産業でもありました。日本に残っていなくとも、輸出先のアメリカで残っている場合があります。アメリカ人の方が物を大切にするのか? それもあるかもしれませんが、アメリカは広い。住居も広い。物置に様々な物をそっくり残している家も多いのです。

「MADE IN OCUPIED JAPAN」と書かれた、高さ11Cmのこの2点は、敗戦後、アメリカの占領下の下で輸出した物です。敗戦国の子供達が万華鏡を見て楽しむ余裕はありません。戦勝国アメリカの子供達のために輸出された物です。戦後すぐに輸出できたのは、当時のおもちゃ産業は、小周りのきく形態だったからです。60数年を経ているにもかかわらず、これだけ印刷がはつきりしているのは、デッドストック状態で見つかったからといえます。映像はどことなくノスタルジックな趣きです。時代が流れて行った、その時間を見ているともいえます。

 

昭和の懐かしい駄菓子屋万華鏡を集める!

 

 かつて町内に1軒は必らずあっ駄菓子屋さん。妙に食べたくなるお菓子だけでなく、どうしても買いたくなる駄菓子屋おもちゃのオンパレード。どれかひとつ食べるのを我慢すれば、買えるおもちゃの中から、万華鏡を手にしたことがある人は多いと思います。

 明治時代、安価で買えるおもちゃを、一銭玩具と呼んでいました。一銭、ニ銭、三銭で買えるおもちゃは、アラカン(還暦)世代には、一円、二円、三円で買え、昭和30、40年代には、10円、20円、30円で勝つ買っていた思い出があるはずです。今の子供達には、100円ショップで買えるおもちゃかもしれません。!小物玩具とも呼ばれた物を、記憶をたどっていくと、まず思い出すのがブリキ玩具。自動車、汽車、飛行機、船……。小生は長男だったので、ともかくおもちゃをたくさん買ってもらった覚えがあります。昭和30年代、ようやく訪れた平和な時です。父も戦争体験があります。生きて帰ってこられ、結婚をし子供が生まれる。おもちゃをいっぱい買ってあげよう! と思ったはずです。大きな茶箱から飛行機の翼や、蒸気機関車の煙突がはみ出すほどで、そこから引っ張り出しては遊んでいた日々でした。もちろん、千代紙、メンコ、独楽、ボール、お面、ロー石、パチンコ、ゴム鉄砲などなど、懐かしのおもちゃもあふれていました。

 「まじっく・すこーぷ」は昭和30年後半、ディズニー・キャラクターの101匹ワンちゃんと、バンビの万華鏡です。キャラクター・ブームのはしりとなるおもちゃです。もちろん日本製です。

 ビーズケースが3つあり、交換できるデラックス ファンシー カレイドスコープは、アメリカに輸出された物です。箱は残っていますが、ところどころ破れています。でもアメリカの少年か、少女は大事に万華鏡を見ていたことがうかがえまず。箱の右上に、50セントと書いてあります。お母さんが書いたのでしょうか。TVで放送されていたアメリカの家族が彷彿とされます。

 

無ければ作ろう!スティーブン社

 

 アメリカには有名なおもちゃメーカーがあります。Steven社がそれです。1946年から数多くのおもちゃ万華鏡を作っていますが、アメリカにはStevenの万華鏡だけを集めているコレクターもいるほど。会社の名前は、会社を作ってしまったお父さんの息子の名前。スティーブンが友達の家で見た万華鏡を欲しがり、父親は探したものの見つからず、ならば作ってみよう、とスティーブン社が始まったとか。日本もアメリカも、お父さんは一所懸命です。ところで、アメリカに輸出された物と、このスティーブン社の物は、とてもよく似ています。ビーズが交換できることと、先端を回して見る表示が「SNAPーIN HEADS」となっているので、多分、日本のメーカーがまねて輸出した物と思われます。

 2000年にミレニアム万華鏡を作っており、それは日本万華鏡博物館にコレクションされているのですが、それ以降の物は見ていないので、寂しい気分です。花火がクルクル回っている絵が描かれた万華鏡は、50年代に作られた物で、鏡はメタル(多分ブリキ製)ミラーを2枚使用しています。残念なことに半分しか反射していないのが、その映像です。ミラー劣化によるためですが、万華鏡が残りにくい原因のひとつに、劣化により映像が美しくなくなったため、捨てられてしまうことがあるのです。

 70年~80年にかけて、おもちゃはブリキからプラスチック製に移っていきます。左のメイルボックス型万華鏡はアメリカ製。アメリカの大きなスーパーマーケットのおもちゃコーナーに、たまに見つけることができます。おもちゃにも安心、安全が求められる時代になっていき、プラスチック製品は全盛を迎えてきます。

 最近、残念なことは、景気の後退とともに、安くて楽しいおもちゃの万華鏡が少なくなったことです。安価でもアイデア豊かな楽しい万華鏡を見つけることは、コレクターにとって至福な瞬間です。全世界の玩具メーカーの皆さん、安くて面白い万華鏡をどんどん作ってください。いっぱいコレクションしたいと思っています。